Webディレクターの仕事

ボトムアップかトップダウンかという不毛な論議。すべては地図を作るために。



タスク管理の話をすると、その方法論について大きく2つに分断されます。

トップダウンか、それともボトムアップか。この2つに区分されるケースは少なくありません。

トップダウンとは、上から下に、未来から今に向けられるタスク管理を指します。代表されるのが「7つの習慣」。「自分が理想とする姿から、今の自分が何をするべきか細分化していく」という方式です。

ボトムアップは逆に、下から上に、今から未来に向けられるタスク管理です。代表されるのが「GTD」。今の自分が気になっている事、頭を悩ませている事柄を洗い出し、それをこなすことで "あるべき自分の姿" に到達する方式。

さて、あなたはこれを聞いて、全く逆の発想であり、水と油のように相容れない考え方だと思うでしょうか。

以前の私はそうでした。二者択一であり、どちらか一方に注力したやり方でなければいけない。どちらも重要であるのは分かるけれど、自分はどちらかの方法論を選ばなくてはならない。

誰に強制されたわけでもないのに、何故かこんな固定概念に縛られていました。

しかし、ウェブディレクターと言う立場につき、プロジェクトを指揮していく立場になって初めて分かったことがあります。それは、「この2つは同一に存在することができるし、むしろどちらか一方を蔑ろにしていいものでもない」という事。

これに気がつけたことによって、私のタスク管理は非常にフレキシブルに、そして扱いやすくなったように感じています。

トップダウンかボトムアップか。

鳥の目を持つためのトップダウン

トップダウンで見る
photo credit: mohammadali via photopin cc

トップダウンによるタスク管理とは、「最初に目的や目標をコミットし、そこに達成するために必要なアクションを細分化。それを細かく刻んでいった末に、今日という日のアクションが見えてくる。」こういう考え方です。

これは非常に、理にかなった考え方です。何故なら、それこそが唯一ゴールに到達する方法だからです。

例えるなら、Google Mapsで目的地への経路検索をするのと同じようなもの。「○駅から乗車」「△駅で乗り換えて」「×駅に到着」「そこから歩いて*分」と、標を打っては、一つ一つクリアしていく。

目的地があり、現在地がある。それらを結べば良いだけですが、直線では行けない。なので、どこかを経由する必要がある。

その経由地を仮のゴールとして設定し、まずはそのゴールに到達することを目標とする。何度も経由地に到達するうちに、ようやく目的地に辿り着ける。

これが、基本です。そしてこれは、あなたの人生でも同じ。ゴールを見据えて、そこに到達するまでに必要なステップを考え、もっと細かな具体的アクションに落としこみ、今日やるべきことを決定する。

そうすると、「今日やるべき事を積み重ねていけば、自ずとゴールに辿り着ける」という状況を作り出せるのです。

言うなれば "鳥の目を持つ" ということです。

自分の人生を遥か上空から見下ろして、向かうべき道を把握する。それこそ本当に、Google Mapsのような感じです。

しかし、トップダウンの考え方だけでは足りない。"鳥の目" を持つだけでは足りず、"虫の目" を持つことも同じぐらい重要なのです。

虫の目を持つためのボトムアップ

ボトムアップの視点を持つ
photo credit: Victor Bezrukov via photopin cc

ボトムアップの考え方は、下から上に。つまり、今を積み上げていった結果として未来を作り上げる考え方です。“あるがままの姿” の視点から ”あるべき姿” を導く方法、これをボトムアップと言っています。

自分のやるべき事を明確に、目に見える形として整理することで、より先の、より高い位置から自分を見つめることができる。

Google Mapsで先を見据えても、自分自身が行動を起こさなければ目的地には辿りつけません。歩を進める必要があるのです。

また、自分の行動のすべてが目標を達成するためのアクションではありません。雨が降ってきたら傘を買わねばなりません。この前切れたボールペンのリフィルを途中で買わなければいけないかもしれません。

すべてが目標に結びつくわけではない。けれども、自分が生活をする上で必要不可欠な要素は、こなさなければなりません。

だから、今日・今という視点に立ち、自分が成すべきことを整理・把握する必要性があるのです。

ではボトムアップだけ充足されるかと言われれば、私は決してそうは思いません。

ボトムアップの視点から "今やるべき事" を洗い出すときには、自分が本来的に行いたいアクションを知る必要があります。

それを知るには、向かうべき方向が明確になっている必要があります。向かうべき方向があるからこそ、「あれもやりたいな。これもやっておかなければ。」と、今の自分が成すべきことを見つけることができるのです。

実は、GTDでもこういう考え方を提唱しています。自分を空高く打ち上げて、遥か上空高度5,000mから地上を見下ろすことの必要性を説いています。

重要なのは地図

トップダウン・ボトムアップ。どちらの考え方を持っても、必ず重要なのは、結局のところ地図なのです。

自分の目の前に広がる広大な大地を、これから一歩ずつ歩かなければならない。私はこの大地を、26年間歩き続けてきました。

これからも、歩かなくてはなりません。そのためには、地図が必要です。そうでなければ、私は荒野に放り出されたように感じることでしょう。

自分が迷わないためにも、地図が必要なんです。そして地図には、「目的地」「経路(ルート)」「経由地」「コンパス」「現在地」が必要です。

トップダウンやボトムアップが大切なのではありません。

自分のロードマップを作り上げることこそ重要。そして、そのロードマップを作り、運用していく方法として、トップダウンやボトムアップの考え方が重要になってくるのです。

今日お話しした内容に絡めた内容で、「つながるカンファレンス」での講演を予定しています。ご興味ございましたら、ぜひお越しくださいませ。

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via: 2月17日 第四回つながるカンファレンス(東京都)

あとがき:自分を知るのは存外難しい

今の自分が立つ場所。これから向かいたい場所。これらを見つけるのは、なかなかに難しいものです。

私も、こうしてブログを書き続けたからこそ見えたものが、非常に多くあります。

ブログを始めた当初は、「自分はどこに行きたいのか?」という問いに対して、明確な答えを持っていませんでした。ただただ単純に、「今のままではいけない。変えなければ」という強迫観念に背中を押された。それだけでした。

それが気がつけば、大変なところまで来てしまったものです。

その時に持っていたのは「コンパス」と「現在地」だけでした。ただただ我武者羅でしたから、それだけあれば充分な気がしていました。

ある地点に立って見て初めて見える景色がある。きっと1年後には、また違った景色が広がっているのでしょう。

その時はまた、ロードマップを書き直さなければなりませんね。




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  • この記事を書いた人

ばんか

Webディレクターとしてサラリーマンをやりつつ、個人でブログや執筆活動をするパラレルキャリアを実施中。 ITツールを日常で活かす方法を広く伝え歩くことをミッションとした「ITツールエバンジェリスト」です。AllAboutやYahooクリエイターズプログラムでも活動中。

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