書き物に集中したい。そんなときは、余計なものをすべて捨て去って、ただ文章とだけ向き合っていたい。そういうこともある。
iPhone や iPad であれば、これは簡単だ。原則として、ひとつの画面にひとつのアプリ。他のことに目移りすることなく、文字をひたすら打ちつづけられる。
しかし Mac だとそうはいかない。画面が広いことがわざわいして、いくつかのアプリを同時に開き、アチラコチラに目が泳いでしまう。
では、Mac で文章と向き合いたいときはどうするか。そのためのアプリを使うのである。
今日は「全画面表示で使えるテキストエディタアプリ」をご紹介しよう。
Paper
まず最初は「Paper」というアプリ。Dropbox が提供している「Paper」とは関係ない、まったくのオリジナルなアプリだ。
いくつかの機能は月額の有料プランへの登録が必要だが、基本利用は無料。ただ文章を書くだけなら、無料の範囲で十分に役立つ。
余計なものが一切なく、シンプルで、洗練されたデザイン。現在地を示す赤いラインだけがアクセントとして存在し、あとはただただテキストを入力することだけに没頭できる。
一部のマークダウン記法にも対応している。見出し・箇条書き・番号付きリスト・太字などが使用できるため、文章の中にもメリハリをつけることができる。
そしてもっとも特徴的なのが、トラックパッドによるジェスチャーでの操作だ。
ピンチイン・ピンチアウトで、ウインドウサイズを自由自在に調整できる。Undo・Redoをするとき、二本指をつかって、時計のように回す。
ジェスチャーによるアクションを Mac でここまで積極的に採用した例を、ぼくは他に知らない。とてもおもしろい試みだと思う。
ちなみに、一定時間操作をしないとカーソルが飛び跳ねたり、Mac をスリープから解除すると「Zzz...」と寝ていたりと、面白いギミックが隠されている。ところどころに散りばめられた遊び心が、文章に行き詰まった心を癒やしてくれる。
OmmWriter
つぎに紹介するのは「OmmWriter」というアプリだ。
すべての余計なものを捨て去り、ただ文章を書くためだけに設計されたアプリ。集中して、ただし気持ちよく、目の前の文章に没頭できる環境を用意してくれる。
アプリを起動すると、ほかのすべてのアプリ画面が排除され、「OmmWriter」が全画面に表示される。一切の余分がなくなり、ただ文章を書くことだけが許された空間へ、放り込まれる。
そして特徴的なのが「音」である。
このアプリは「音」と共存するアプリなのだ。
テキストを入力しているときにはBGMが流れる。いくつかの音楽が用意されているが、どれも穏やかで、リズムがよく、リラックスした気持ちにさせてくれる。
キーを入力すると、それにともなって「タイプ音」が鳴る。文字を入力するたびに、耳障りの良い「ぱちぱち」という音が鳴り響き、タイプすることの楽しさを思い出させてくれる。
「OmmWriter」を起動したら、あとはもう書くことしか許されない。本当に書き物に集中したいなら、これだけの強制力のあるアプリが必要なのかもしれない。
Byword
最後におはなしするのは「Byword」だ。シンプルで洗練されたデザインが好きで、昔からお世話になっているアプリだ。
不要な情報をなるべく削除して、目の前の文章にだけ集中できるようになっている。画面下には「文字数カウント」もあるが、書き物の邪魔にならないように、うっすら、ひっそりとしている。
変更できる設定も「ダークモード or ライトモード」「左右の余白」「フォントの種類とサイズ」ぐらいなもので、本当にあっさりしている。「変更できない」は不自由ではなく、余計なことに考えを巡らせないための工夫である。
ほかにも、文章に集中させるための工夫がある。
入力しているパラグラフを常に画面の中心に配置する「タイプライターモード」や、行や段落にのみハイライトを当てる「フォーカス機能」を使えば、より文章づくりに没頭できる。
マークダウン記法には対応しているので、文章にメリハリをつけることはできる。見出し・箇条書き・太字ぐらいの装飾ができれば、必要十分だ。
また、書き出しのフォーマットが豊富なのも、地味にうれしい特長だ。
HTMLやWord、PDF、リッチテキストへの書き出しが可能。くわえて、WordPress、Evernote、Medium、Tumblr、Bloggerなどのサービスにも書き出せる。
不要なものを引いて引いて、本当に必要なものだけを絞りとったエッセンス。それが「Byword」だ。
あとがき
ぼくが普段愛用しているテキストエディタは「CotEditor」だ。シンプルで面白みはないアプリだが、汎用性が高く、どんな場面でも役に立つ万能さがある。
ちょっとしたメモから、議事録などの本格的な文章、ブログ記事のような執筆などなど。あらゆる場面で活躍できるところが大好きだ。
しかし、文章に集中したいときは、"なんでもできる" が邪魔になる。
いろんなものを制限し、ただ目の前のことに集中できる環境を強制的につくることが必要なとき、ぼくは「Paper」や「Byword」、「OmmWriter」を活用するのだ。