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制約こそがアイデアの秘訣!53 Paper は機能が足りないからこそクリエイティブが発揮される

iPadにおける至高のお絵かきアプリ「Paper by Fifty Three」。

人気ではありつつも、実はそんなに高機能なアプリではありません。他のペイント系アプリには備わっていて当然な機能が、このアプリでは使えなかったりします。

しかし、それゆえに、このアプリを使うとクリエイティブが発揮できるんです。

Paper by FiftyThree

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人は制限の中でこそクリエイティブを発揮できる

人は、制限やルールを設けられている方がより自由な発想をもってアイデアを創出できます。

限りなく広がる荒野に放たれて「ほら、遊んでおいで!」と言われても、実はそんなに自由を感じられません。それよりも「ボールをひとつ渡すから、この柵の中で好きに遊んでごらん」と言われたほうが、豊かな発想ができるんです。

アプリも同じ。

なんでもできるアプリよりも、ある程度の制限やルールがあるアプリの方が、実は余計なことを考えずに済む分だけ、豊かな発想ができます。
使い方や操作、使うツールに頭を悩ませることなく、「描く」という行為に対して集中できるのです。

そういう意味で、この「Paper by Fifty Three」は非常によくできたアプリだなぁと思うのです。
不便になり過ぎないギリギリのラインで機能に制限をかけることで、よりクリエイティブを発揮できるように設計されているのです。

……たぶんね。制作者の意図がそうなのかは分かりませんが、少なくとも、長く使っている私はそう感じています。

他の高機能アプリなんかだと、どうしても操作や道具選びに頭を使ってしまうんですよね。
ですが 53 Paper は、アプリ自体の操作について考えることはなく、"アプリを使って何をするか" に集中できるんですよ。

じゃあ 53 Paper における制約とは何なのか。それは、以下の3つの機能制限なのです。

制約1:ペンの種類が限られている

まずこのアプリ、選べるペンの種類が全部で5種類と少ないです。
明確にカテゴリ名がついているわけではないのですが、あえて区別するなら「万年筆」「鉛筆」「マーカー」「サインペン」「水彩絵の具」という5つになります。

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一般的なペイント系アプリだったらね、エアブラシとか塗りつぶしとか色々とりそろえているんでしょうけど、53 Paper では厳選された5つのペンしか使うことができません。

しかし、この5種類がいいんですよ。

この5種類しかないから、それぞれのペンにおける表現方法を早い段階で理解できて、これらを組み合わせたらどんな雰囲気の絵が描けるかのイメージがつきやすいんです。

使える道具が多いほど、表現の幅も広がるかもしれません。ですが、結局は宝の持ち腐れ。使い切れないんですから。これぐらい割り切って制限されたほうが、私は使いやすいです。

制約2:キャンバスの大きさが限られている

53 Paper に描けるキャンバスの大きさは固定されています。見開き1ページ分が、絵を描ける範囲。これ以上広げることは叶いません。

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また、拡大率も1種類のみ。指でピンチアウトしたときに表示されるルーペ以外に拡大する方法がないんです。

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しかし、空白恐怖症の私にとってはちょうどいいのです。

日記帳とかノートで、最後まで使い切れないことがあるじゃないですか。その理由として、空白を嫌うというのがあります。

余白を埋めるほど書く内容がなく、しかし余白があるとなんだか足りていない・物足りない印象を受けてしまい、結局長続きしない。そういった経験は誰にでもあると思います。

特に私は余白を感じてしまいやすく、それを埋められないことに嫌悪感を感じるんです。

なので、無限に広がるキャンバスは非常に怖い。使い切れないことの気持ち悪さが先行してしまって、そこに自由は感じられないのです。

手の届く限られた範囲の中であれば、私はその余白を塗りつぶすことができます。

制約3:絵を描く以外の機能はなにもない

53 Paper は、絵を描く以外のことができません。

他のアプリであればね、PDF を読み込んだりレイヤーとして使ったり、はたまた音声を録音できたりするところです。しかしこの 53 Paper にはそういった余計な機能はないんです。

強いて挙げるなら Mix という機能でしょうか。他の人がクラウド上にアップした画像に対して、自分なりのアレンジを加えられる共有機能です。

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ですが、どこまで行っても機能はシンプル。"描く" という行為以外は、何もやることがありません。

したがって、このアプリを起動したらやるべきことはただひとつ。必死こいてアイデアを膨らまし、それを形にするだけです。余計なことは考えず、ただただキャンバスと向き合うことができます。


数々の制限がありますが、その制限は決して縛り付けるものではなく、ユーザーの発想を手助けしてくれるものです。息苦しく感じることはありません。割りきってシンプルにまとめてくれているからこその使いやすさが、このアプリにはあります。

また、表現方法を広げる手段として、専用のスタイラスペン「Pencil by Fifty Three」の存在も忘れてはいけません。私も愛用していますが、これがあるとないとでは、楽しさが段違いなのですよ。

ちょっと値はありますが、非常にオススメのスタイラスペンです。

あとがき

本格的なイラスト制作には物足りないんでしょうけどね。私ぐらいのレベルにはちょうどいいのですよ。

ただ、Mix って機能で世界のユーザーさんが描いたイラストを見ると、「あぁ、弘法は筆を選ばないんだな」と思い知らされますよ。

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  • この記事を書いた人

ばんか

Webディレクターとしてサラリーマンをやりつつ、個人でブログや執筆活動をするパラレルキャリアを実施中。 ITツールを日常で活かす方法を広く伝え歩くことをミッションとした「ITツールエバンジェリスト」です。AllAboutやYahooクリエイターズプログラムでも活動中。

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