最近イヤホンを新調した。最新機種ではなく、しかもワイヤレスでもない、SHURE社の「SE215 Special Edition」である。
11,918円(2020/01/08時点)
発売されたのは2012年。かなり古いモデルだが、SHURE社のイヤホンのエントリーモデルとして今もなお人気が高く、愛用している人も多いイヤホンである。
ではなぜこのワイヤレスイヤホン全盛期のいま、有線のイヤホンを購入したのか。その理由をお話ししようと思う。
ワイヤレスだけが選択肢じゃない
イヤホンの購入を考えたとき、無意識にワイヤレスイヤホンだけを選択肢として考えてはいないだろうか。
確かに、昨今の技術躍進はめざましい。Bluetoothの安定性やバッテリーの持ちなども飛躍的に向上し、非常に高品質なものが安価で手に入るようになったと、私も実感している。
生活する中での利便性を考えても、コードが無くなるだけで受けられる恩恵は多い。
音楽を聞きながら部屋の中を移動できるのは助かるし、マフラーやコートを脱いだときにイヤホンが外れる煩わしさもない。
これは素晴らしいことだ。そう思っていたからこそ、すでに10個を超えるワイヤレスイヤホン・ヘッドホンを試してきた。
しかし今、有線に戻ってきたのには理由がある。この「ワイヤレス全盛期」だからこそ、有線ならではの素晴らしさを再認識することができたのだ。
1. 有線のほうが音質が良い
たとえば同じ1万円を支払ってイヤホンを勝った場合、音質や有線のほうに軍配があがる。ワイヤレスイヤホンよりも、有線イヤホンのほうが音質が良いのだ。
その理由は、音楽の再生における構造にある。
Bluetoothは更に圧縮しなければならない
音楽というのはデータであり、そのデータを電気信号に変換させ、増幅し、振動させる。音質の良し悪しは、このデータをどれほど圧縮しているかによって、大きく左右される。
圧縮しないデータは容量が膨大になってしまうため、音楽データは基本的に、多かれ少なかれ圧縮されている。これはワイヤレスだろうと、有線だろうと、条件は同じだ。
しかしBluetoothの場合、そこから更に処理が必要になる。
Bluetoothは、無線伝達の際にデータを伝送用に変換する必要がある。つまり有線よりも、圧縮する工程が増えてしまうのだ。
「SBC」「AAC」「aptX」といった言葉を聞いたことがあるかもしれない。これが圧縮方式で、「どれだけ音質を下げずにデータを圧縮できるか」によって、音の善し悪しに差が出る。
SBC:高圧縮で音質はイマイチ。搭載必須の標準となるコーデックのため、全ての機種で対応されている。
AAC:Apple iTunesの標準圧縮方式。SBCと圧縮率は変わらないがより高音質。
apt-X:圧縮率が少なく、遅延も少ない。CD音源の原音に近い音質で転送できる。
LDAC:2015年にSONYが開発した方式。ハイレゾ音源にも対応。
デバイスに搭載できるパーツ
イヤホンの大きさは、ワイヤレスでも有線でも、それほど差がない。しかしワイヤレスのほうは、有線と違って、「バッテリー」や「Bluetoothレシーバー」を積まなければならない。
スペースは限られている。増幅させるための「アンプ」や、振動させるための「ドライバー」は、どんなイヤホンにも必要だ。
筐体の中を占めるパーツの割合・掛けられるコストを考えれば、有線イヤホンのほうがより良いアンプ・ドライバーを積めるであろうことは、容易に想像できると思う。
もちろん、「3千円の有線イヤホン」と「2万円のワイヤレスイヤホン」であれば、おそらくワイヤレスのほうが良質な音で聴けるだろう。
しかし同額の2万円で比較したなら、おそらく有線の音質のほうが良くなるだろう。つまり音質に対するコストパフォーマンスで考えると、有線のほうに軍配が上がるのだ。
音質ってそこまで重要?
「いや、楽器を演奏するわけでもないし、日常生活で音楽や動画を楽しむレベルだから、こまで音質にこだわってないよ」
私はこう思っていた。特に動画の視聴にいたっては、音が聞ければそれでよく、音質なんて気にしたことはない。
しかしそれは「良い音」を知らなかったからだった。
クリアで、透き通った音。シャープで、音のひとつひとつが立つような、メリハリのあるサウンド。ピアノやバイオリンの音の粒が、もやーっとせず、シャキっと耳に届く心地よさ。
これを知ると「あぁ、音ってのは確かに、良いに越したことはないんだな」と思える。別に音質が悪くても困りはしなかったが、良い音は気持ちがいいのだ。
これは本当に有線イヤホンにしてよかったと心から思える理由のひとつである。
2. 遅延がないことの重要性
ワイヤレスイヤホンは遅延する。これはほぼ100%間違いないと思ったほうが良い。少なくとも今の技術では「遅延が一切ない」という状況はあり得ないと思って良い。
以下のYoutubeは、私が公開している「ワイヤレスイヤホンの遅延具合をチェックする動画」である。ここに載せられたコメントを見れば、ワイヤレスイヤホンがいかに遅延するか、わかってもらえると思う。
もちろん、遅延が本当に少ないものはある。しかしやっぱり「目で見た情報と、聞いている音に差分がある」という状況が発生する。
知覚できないほどのわずかな誤差なら良いのだか、残念ながら私は、「目と耳の情報の誤差」を感じてしまう。
特に映画や動画、ゲームをしているときなどは、これが大きなストレスになる。有線ではこのストレスが解消され、非常に心地よくリラックスした気持ちで映像を見ていられるのだ。
3. バッテリーの心配が不要
最後に、これは本当に些細だが、バッテリーの心配が無いのも嬉しい。
最近のワイヤレスイヤホンでバッテリーの持ちも良いし、ケース自体が充電器になっているので、「バッテリー切れで使えない!」って状況はほとんど起こっていなかった。
しかしそれでも、たまには充電忘れをしたりする。そうすると、そのイヤホンを使えない一日を過ごさなければならない。これが結構落ち込むのだ。
そういうトラブルやイレギュラーのリスクが一切ないというのも、有線の良いところではある。
「SHURE SE215」ならワイヤレス化も可能
「比較的安価で良いイヤホンがほしい」と考えたので、今回私は「SHURE SE215」を購入した。悪い評判を聞いたことがなく、ゲーミングイヤホン・モニターイヤホンとしても人気の逸品だ。
しかも「SHURE SE215」は、その拡張性の高さも素晴らしい。
「SHURE SE215」は、イヤホンにつながっているコードを取り外すことができ、新しいものに取り替えたり、違うタイプのものに切り替えたりできる。
Bluetooth接続できるタイプのコードもあるので、「有線買ったけど、やっぱりBluetoothにしたい」と気分が変わったときにも対応できる。
13,340円(2020/01/08時点)