最近の私の愛用文房具はたったひとつ。しかし、これ一本で自在な表現ができる不思議なペン。
力加減で筆跡の強弱を表現でき、日本語特有の「とめ、はね、はらい」を書き分けられるそのペンは、日本の職人の技術とこだわりが凝縮された一品なのでした。
私が愛用するプラスチック万年筆「トラディオ プラマン」
「トラディオ プラマン」は、別名プラスチック万年筆と呼ばれる不思議なペン。
見た目に高級感はありませんが、非常にこだわりとセンスを感じさせます。手にすれば自然と愛着が湧いてくるのですから、なかなかに魅力的なデザインです。
さて、これ一本で自在な表現が可能だと言いました。その秘密はペン先にあります。
ペン先は樹脂性で、それをサンドイッチする形で挟み込んでいます。そして、その挟んでいるホルダーの上下の長さが違うのです。
これにより、ペン先の "しなり" をコントロールでき、筆跡の強弱を生み出します。ホルダーの長い方を上にすれば硬めにしなり、逆に短い方を上にすれば大きくしなります。
万年筆の場合は「正しく書く向き」というのが決まっていますが、トラディオ プラマンに正解はありません。向きを変えて、自分の好みの書き味を楽しむことができます。私なんかは、細い線を書きたいときは横にして書いていたりしますね。
インクは水性。フローはスムーズで、書き味の表現としては「サラサラ」というのが適切でしょう。
ペン先にあるプラスチックの芯が絶妙な硬さのアクセントとなり、自分の力加減を紙の表面まで届けてくれます。
サインペンでもなく、万年筆のそれとも違う。なかなか独特の世界観を表現してくれるペン。
私の字はお世辞に上手いといえるものではありませんが、普通のボールペンで書く字よりも日本語らしく、味が出てくるから不思議です。メリハリ・強弱・抑揚といった、文字への変化が出せるからでしょう。
建築家である谷尻 誠さんも、その書き味に魅了された人のひとり。アナログのペンとしては、いまはこれしか使っていないのだと言います。
筆圧にあわせて応えてくれる独特の書き味がポイントで、細くも太くも書ける表現の自由さがとても良いのだと。
歴史は長く、40年愛され続けている
トラディオ プラマンの歴史は古く、かれこれ40年近くも販売され続けています。
開発当初、影響を受けていたのが万年筆でした。嗜好品というポジションが定着し始めていく一方、万年筆独特の書き味・濃淡・筆跡の美しさに代わるペンが一向に現れなかったのが、開発の第一歩。
ぺんてるは、安さと使いやすさの両方を兼ね備えたペンとするため、金属ではなく、プラスチックを利用したペンの研究開発を進めたのです。
なんでもそうですが、"本質が良い物" は時の経過に影響されず、風化もせず、愛され続けていくのですね。ドリフターズのコントが今でも笑えるのと同じように。
値段は500円と、非常に手が出しやすくリーズナブル。ちょっとクセがあって、最初は使いにくいかもしれません。
ですが、その「上手く使えなさ」を楽しみながら使い続けていくと、彼を理解することができ、他のペンでは代えがたい楽しさを得られるようになります。