商社の営業がWebディレクターになって、もう10年ぐらいになる。
まだまだ自分も半人前だと思うが、そろそろ謙虚も嫌味に聞こえてくる頃合いの年齢で、後輩たちにも良い格好はしたいものである。
今日はそんな私が、日頃ディレクターとして気をつけている点をお話ししようと思う。これからディレクターとして活動する人たちの、心構えのひとつにでもなってくれたら嬉しい。
体調管理・健康管理
一番最初にこの項目を持ってきたけど、これが本当に大事!なのにないがしろにされがちなので、ぜひみんなも気をつけよう。
ディレクターが動けなくなったら、案件を進められる人いなくなってしまう。兎にも角にも体調を崩すことなく、常に元気でいることが大切。
睡眠、食事、運動、あとは飲み物に気を配ろう。
睡眠については、「寝溜め」はできないけど、「寝不足」は解消できる。徹夜で頑張ってもOKだが、その分をどこかで取り返すようにしている(持論)。
あと大切なのが、体調を崩したときの戻し方を、自分の中で確立しておくことだ。
私の場合はだいたい「睡眠が足りてない」「水分が足りてない」「目を中心に身体が疲れている」といったことが原因なことが多く、そのための対策をいろいろと用意してある。
自分の意見を持つ
自分だけではなかなか解決できないことも多く、先輩ディレクターや、デザイナー・エンジニアの方に相談することも珍しくない。
しかしそこで、漫然と「これわからないです」と聞きに行くのは違うと思っている。必ず自分の意見を準備してから相談するようにしているのだ。
自分で結論を持って「自分はこう思うんですけど、意見いただけますか」という姿勢が大事。知識や経験がなくても、自分なりに考えて、考え抜く癖をつけている。
思考を停止させて、ただ相手に意見を求めるのが一番ダメだ。
良いものを「良いっすね!」と表現する
特にデザイナーやエンジニアの方々に対しては、あがってきたクリエイティブに対してきちんと「良いっすね!」を伝えるようにしている。
この仕事をしていると、評価や修正ばかりが目立ってしまって、マイナスな表現が多くなりがちだ。
「ここはもっとこうして」「そうじゃなくって、こうして欲しい」など、言いたくないことを言うのが仕事って側面も少なからず存在する。
そんな役割だからこそ、良いときは「良い!」と、きちんと相手に伝えたい。また、クライアントが喜んでいたら、その旨もきちんと制作者の人にも伝えたいものだ。
他人へのリスペクトを欠かさない
Webディレクターという仕事は、自分だけでは何も作れない仕事だ。デザイナーやエンジニアをはじめ、多くの人たちの協力があってはじめて、クリエイティブは形になる。
それは同じ職場の人間だけではない。クライアントも、同じ目的に向かって進むチームの一員だ。
これらの人たちへのリスペクトなくして、良いプロダクトは生まれない。いつでも謙虚さと礼儀正しさ、そしてユーモアを忘れずに仕事をしたいと心がけている。
ギフトとサプライズ
言われたことを、言われたとおりに。
期待されたことを、期待どおりに。
これで十分なのかもしれないけど、できることなら喜んでもらいたい。だからなるべく「プラスワンの驚き」を提供できるように努めている。
社内の修正指示書なら、必要な資料をちゃんと添付しておく。
Dropboxの中を探せば見つかる資料だけれど、添付したほうが、デザイナーの手間は少なくて済むだろう。
ワイヤーフレームも、ペラペラの一枚絵を提出するだけで十分かもしれない。しかし、XDでリンクを繋げたり、簡単なアニメーションを設定しておいたほうが、クライアントもイメージが湧きやすいだろう。
自分のちょっとした手間と労力で、相手がちょっと喜んでくれるなら、それはぜひやるべきなんだと思っている。
「納得」を最優先にする
Webディレクターを10年やってきたが、まだまだわからないことも多い。新しいテクノロジーや技術についていけないこともある。
クライアントへの最初のヒアリングミーティング。自分の理解が追いつかず、クライアントの希望や与件が掴みきれないこともあるだろう。
そんなとき、わからない自分を恥ずかしく感じ、なんとなく「わかった気になりたい」と思うことがある。
しかし「わかった気」のまま案件を進めると、その爆弾は必ずどこかで爆発する。これは、コーラを飲んだらゲップが出るぐらい "絶対に" なのだ。
だから自分がきちんと納得できるまで何度も聞くようにしている。「しつこいな」と思われても良い。あとで「話が違うじゃないか」と怒られるより100倍マシだ。
もし「自分ひとりではヒアリングしきれないな」と思ったら、そのときは臆面もなくデザイナーやエンジニアに同席してもらっている。大事なのは「無知の知」なのだ。
ニュアンスと伝え方に気を配る
ディレクターはときに、言いづらいことを言わなければならない。しかし「言い方」ひとつで、結果は変わるのだ。
むかし、人心掌握術について右に出る者はいないと言い切れるほど信頼している妻に相談したことがある。
「提出の期限が迫ってるデザインがあってね。期限は伝えてあるから、それまでに仕上げるのがプロであって、その期限を待たずに "進捗どうですか?" と質問するのは失礼な気がするんだよ。
でも、依頼してから一週間は経っていて、その間に連絡が一切ないものだから、やっぱり心配で…。こういう場合、やっぱり任せたのだから信頼して待っていたほうがいいんだろうか。」
そうしたら妻は言った。
私だったら、その人のデスクの近くを通ったときに、それとなくパソコンの画面をチラッと見てみて、状況を観察するかな。で、依頼した案件が全然手がつけられてなさそうだったら、声をかける。
「おつかれさまです!最近けっこうお忙しそうかなって思ったんですが、先日ご相談した件ってどうでしょう!もし困ってたりすることがあったら相談してください!できるところはお手伝いするので」
みたいな感じで言うかな。そうすれば、相手だって嫌な気がしないでしょ?
普通のことを言っているように見えるけど、私にとっては衝撃的だった。「あぁ、伝え方ひとつで、こんなにも印象は変えられるのか」と。
私はそのあたりの表現がヘタだ。それは自覚している。しかし妻の話を聞いた後は、ヘタはヘタなりに、意識的に伝え方に気を配るようにしてきた。
コロナの件があって、直接肩を叩いて話しかけることはできなくなってしまったけれど、その分だけ Slack などのショートメッセージでかける言葉やニュアンスには気をつけている。
あいまいな言葉で濁さない
「ニュアンスと伝え方」に気を配りすぎて、回りくどい言い回しになり、結局相手に意図が伝わらない。というのでは本末転倒だ。
特に日本人は「察する文化」と言われるだけあって、はっきりと要件を伝えることが苦手のようだ。私もそう。苦手だ。しかし言わねばならぬのが、Webディレクターという仕事なのだ。
「ここの修正、先方が結構急いでいるみたいなんで、もしお忙しくなければ早めに対応いただけると嬉しいのですが…( チラッチラッ」みたいな言い方。相手から優しさを引き出すような駆け引きが、私は嫌いだ。
急いでいるなら「明日までにご対応お願いしたいのですが、ご都合いかがですか?」と、明確に期限を伝えたほうが、相手も気持ちがいいだろう。
なので資料なども、極力明確な表現をする。100人いたら100人が同じ解釈ができて、一切の誤解が生まれない表現などを使うようにしている。気配りは、その他の場所で発揮すれば良い。
ボールはさっさと打ち返す
タスクの抱え落ちだけは絶対にしてはいけない。自分のタスクが完了しないから、他の制作関係者の手が止まってしまったら、案件全体の進行が止まってしまう。
自分が持ったボールはなるべく早く打ち返すように気をつけている。「キャッチしてリリース」なんて悠長なことはいわず、場合によってはノータイムで打ち返したほうがいいときもある。
100%できあがるまで根を詰めたくなる気持ちをグッとこらえて、60%ぐらいの完成度でも放り投げなければならないケースもあるのだ。どこかで割り切らなくちゃあいけない。
あともうひとつ「悩んでる」と「迷ってる」と「考えてる」をきちんと切り分けるようにしている。
自分の中で答えが出せるのであれば、しっかり「考えれ」れば良い。しかし自分だけの力で解決できないような「悩み」は、さっさと誰かの助力を頼ったほうが良い。
全力を尽くす
一生懸命にやっているやつが、結局はカッコいいのだ。
学生時代なんかは斜に構えている性格だったため、全力を出さないことがカッコいいなんて思っていたなぁ。
社会人になっても、ものごとを効率的に進めることが大事なんだと思っている時期もあった。
しかし大人になって思う。結局は一生懸命に生きている人がカッコいいのだ。
泥臭く、がむしゃらに。無邪気で、素直に、まっすぐ突き進む。そういう背中を、私も娘や後輩に見せていかなければなぁと日々思うのだ。