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2chで泣けた物語から『人の心を動かすストーリー』の書き方を考える

人の心を掴んで離さないのは、いつの時代も『物語』だと思っています。しかし、すべての物語が人の心を掴むわけではありません。

ここに、一つの物語があります。誰が書いたものなのかは分かりません。ですが、その物語は活き活きとしていて、人の心の揺れ動かすほどの物語です。

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もう純粋に「私もこんな文章が書けるようになりたい!」と思わせる物語でした。ストーリーそのものもそうですが、それ以上に『言葉使い』『表現』『情景描写』などなど、参考になるものばかり。

ぜひ一読頂いた上で、私の感想を見て頂ければと思います。一回目は純粋にストーリーを楽しみ、二回目は「何故面白かったか」を考えると、また違った見方ができるかも。

人を引き込む物語の書き方

たった一つだけ、非常識を常識にする

査定結果を見た時はひっくり返りそうになったぜ。
どうやら俺の一生、百万円にも満たないらしいんだよ。

物語の中にいる人たちにとっては、至って普通の日常。この物語の中ではそれが普通で、私たちが生きているこの世界とはちょっと違う。

そんな、非常識が常識である世界。

これが物語を面白くする1つのエッセンスだと思う。例えば今回の話だったら「寿命を売ることができる」という非常識が常識になっている世界。その不思議さの中の日常で、人の心が動いていく様が、とても魅力的に映るんです。

これって、本当に難しいんですよ。私たちにとっての非常識が常識化した世界で、じゃあその世界での価値観や、人々の考え方はどうあるべきなのか。これは、その世界観にどっぷり浸かってないと書けないんだと思う。

寿命が半年を切った客が、
ヤケになって問題を起こすことがあまりに多いから、
それを未然に防ぐために監視員が導入されたそうだ。

世界観にどっぷり浸かると、「こういう事が起こりえる」と考えが至り、その世界の前提が少しずつ構成されていく。言うは易し、行うは難し。

感覚が伝わる喩え話

俺はあらためて店内を見回した。
なんていうんだろうな、眼鏡のない眼鏡屋、
宝石のない宝石店みたいな空間とでもいうか。

こういう発想ができるような書き手になりたいと、切に思うよ。皮肉っぽい、ちょっとスレた感じの表現。とても好きだなぁ。

分からないようで分かる。伝わってくるようで、伝わらない。それでもふっと頭の中にイメージが想い浮かぶ、絶妙な表現だと思う。

主人公が見る視点、思いの丈

「これ、何を基準に決められてるんですか?」
俺はそう言いつつ査定表を女店員に見せた。

「色々です」と彼女は面倒そうに答えた。
「幸福度とか、実現度とか、貢献度とか、色々」
多分、こういう質問に飽き飽きしているんだろうな。

物語の進行は、常に主人公の視点で繰り広げられている。一貫して主人公の立場で構成され、主人公の心情を表現している。そのため、読み手も心を投影しやすい。

引用文では「彼女が面倒そうに答えた」とある。これは、実際に「彼女」が「面倒だった」かどうかは問題ではなくて、主人公にそう映ったという事実が大切なんです。

例えばこの話が中立的な立場で書かれている文章だったら、それはそれは感情移入もできない、つまらない作品になったんだろう。どこかしらに「他人の思いの丈」が混ざりこんでいたら、一気に興ざめしてしまうんだろう。

先入観を覆す意外性

「なあ、お前――まさか、本当に自分の寿命が三十万だって言われて信じちゃったのか?」

これを言っちゃうとネタバレになってしまうので、ちょっと控えます。純粋にこの物語を楽しんで欲しいので。

ただ一つ言えることは、この物語を読み始めた時には既に先入観が植え付けられていて、その先入観が覆される。その意外性というか驚きが、とてもドキッとするんです。スゴいですよ、ホント。

結果、涙が止まらなかった

こればかりは、読んでみて感じて欲しいんです。悲劇なのか、喜劇なのか。それを伝えることはできないんですが、私は涙を抑えることができませんでした。

なんでしょうね。主人公が幸せになってくれたとか、行いが報われたとか、そういうんじゃなくて。きっと主人公の男が流したであろう涙を、私も共有したということなんでしょう。

気づかぬうちに、私はどっぷりとこの世界に入り込んでしまっていたようです。

少し長い作品です。読み終えるのに時間はかかるかもしれません。ですが、ぜひ一度、腰を落ち着けられる所で読んでみてください。その時間はきっと無駄にはならないと思いますよ。


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  • この記事を書いた人

ばんか

Webディレクターとしてサラリーマンをやりつつ、個人でブログや執筆活動をするパラレルキャリアを実施中。 ITツールを日常で活かす方法を広く伝え歩くことをミッションとした「ITツールエバンジェリスト」です。AllAboutやYahooクリエイターズプログラムでも活動中。

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