子供の頃にはよく使っていたけれど、大人になるに従って使わなくなる道具。その内の一つに、「鉛筆」があります。
今やシャープペンシルに取って代わってしまって、鉛筆さえ握ったことがない大人も多いことでしょう。私自身、記憶を掘り返してみても、小学生以来で鉛筆を握った覚えがありません。
しかし、鉛筆にも利点はある。「折れにくいので筆圧を強くして書ける」「故障がなく、半永久的に使える道具」「大きなコストが掛からない」「自分の研ぎ具合次第で、先端の鋭利さを調整できる」などなど。
昔の道具にも、愛される由縁があるものです。
文房具に関して考えていた時、改めて惹かれたのがこの「鉛筆」であり、それを「大人が楽しめる鉛筆」に仕上げた文具があると聞き及んで手に入れたのが「大人の鉛筆」なるものでした。
いわゆる「鉛筆」の定義とは違う姿かたちをしていますが、「なるほど鉛筆の楽しさが包み込まれている一品だ」と感じた、素晴らしい文具です。
今日はそんな、大人が遊び心を取り戻せる鉛筆「大人の鉛筆」のお話し。
大人が手にすると心が弾む鉛筆
ネーミングのセンスが光る文具「大人の鉛筆」。副題には「使い込むほど手に馴染む」と記載されています。
包み込んでいたビニールを外すと、辺り一面に鉛筆の香りが充満します。あの、得も言われぬような木と黒鉛の混ざり合った、懐かしい香りです。
ジャバラ式の包装には、製作者が商品に込めた熱い想いが記載されています。それは、触らずにはいられない程の高温な想いで、「もっと自分の手で文字を書いて欲しい」「書くことの喜びを再認識して欲しい」という気持ちで溢れていました。
商品には、鉛筆のそれを喚起させるような木軸が使用されており、その先端とノック部分には金属が使用されています。このノック部分を押すことで、黒鉛の芯が顔を出します。
さて、このままでは使えません。「使えない」と言うと語弊がありますが、「使うべきではない」のです。何故ならこれは「鉛筆」なので、削らなくてはならない。削って先端を細く尖らせる必要があります。
付属で付いている「大人の鉛筆削り」を使用して、先端を尖らせます。
すると、平らだった黒鉛の棒が、鋭利なペン先へと変化します。
書き味は、いわゆる鉛筆なのですが、何か懐かしさを感じますね。ボールペンや万年筆では得られない、紙に吸い付くような引っ掛かりが絶妙で、病みつきになってしまいます。
黒鉛の濃さも非常に良い。愛用しているロディアのノートに書き込んでも、薄くて読めないことはありません。写真に納めてもちゃんと文字が読めるほどには濃く、これなら私のデジタルライフにも溶けこんでいけそうです。
軸が細いのも鉛筆の特徴でしょうが、これは好き嫌いが分かれる所かと思います。私は細い軸が好きなので良いのですが、人によっては長時間の執筆に疲れが出るかもしれません。
ただ、私は本当に良い買い物だったと思います。この書き味は、シャープペンのか細い芯でも得られず、ボールペンや万年筆でも再現できない。鉛筆ならではの愛くるしさが、そこにはありました。
あとがき
かなり久しぶりに鉛筆を持ってみたのですが、これは確かに他の文房具にはない使い心地ですね。
今まで「滑らかに」「力を入れず」を重要視してきましたが、この「紙に吸い付く感じ」も気持ちいいものです。特に鉛筆は芯が太いため、筆圧を強くしていても折れる心配がありません。
ですので、力強く、文字の跳ね・払いを意識した執筆が可能です。
ちょっとビターな大人の遊び道具「大人の鉛筆」を、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。
それでは、今日はこのあたりで。